「Yuo can raed tihs, can’t yuo?」
……これ、ちゃんと読めましたか?
単語の中の文字がバラバラなのに、不思議と意味がわかる。 この現象は「タイポグリセミア(Typoglycemia)」と呼ばれ、人間の脳が文脈を補完して理解する力を持っているから起こるのだそうです。
では、AIにも同じように“読める”力があるのでしょうか? 今回は「AIであそぼ」と称して、話題の ChatGPT5 にこの“バラバラ文字の文章”を読ませてみました。
AIはどこまで「文脈」を理解できるのか? そして、人間の脳との違いとは? この不思議な現象を、AIとの対話を通じて深堀りしていきましょう!
タイポグリセミアとは?
「タイポグリセミア(Typoglycemia)」とは、単語の中の文字の順番が入れ替わっていても、最初と最後の文字が正しければ読めてしまうという現象です。
たとえば、こんな文章:
例文:
Aoccdrnig to a rscheearch at Cmabrigde Uinervtisy, it deosn’t mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are.
読みにくいのに、なぜか読めてしまいませんか? これは、脳が単語を一文字ずつではなく「形」や「文脈のまとまり」として認識しているためです。
ちなみに…
正しい綴りに直すと:
According to a research at Cambridge University, it doesn’t matter in what order the letters in a word are.
日本語訳:
ケンブリッジ大学の研究によると、単語の中の文字の並び順は関係ない。
日本語でも起こる?
英語ほど明確ではありませんが、日本語でも似たような現象は起こります。 たとえば、次の文章を読んでみてください。
けょんうのよる、にほんでおおきなじしんがはっせいしました。 しんどは5きょくで、ひがいがかくにんされています。
なんとなく読めてしまいますよね。 人間の脳は、文字よりも文脈を重視していることがわかります。
ChatGPT5にタイポグリセミアを読ませてみた
ここからは、いよいよ実験です。 先ほど紹介したタイポグリセミアの文章を、実際にChatGPT5に読ませてみました。
今回使ったのは、英語でよく知られているこちらの一文です。
Aoccdrnig to a rscheearch at Cmabrigde Uinervtisy, it deosn’t mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are.
これをChatGPTに「この文章の意味を説明して」とお願いしてみたところ、こんな反応がありました。
私: この文章の意味を説明してみてください。
Aoccdrnig to a rscheearch at Cmabrigde Uinervtisy, it deosn’t mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are.
ChatGPT5: この文章は、わざと文字の順番を入れ替えて書かれていますが、読むことができるという例文です。
内容を正しい綴りに直すと、次のようになります👇
According to a research at Cambridge University, it doesn’t matter in what order the letters in a word are.
(ケンブリッジ大学の研究によると、単語の中の文字の順番は関係ない。)
つまり意味は──
人間の脳は、単語の最初と最後の文字さえ正しければ、途中の文字の順番が多少入れ替わっていても単語を正しく読める、という趣旨です。
なんか違う…
AIが文章をどのように読んでくれるか気になったのに、ネットから得た知識で回答をしてしまった。なんだか知識ゲーな気がするので、文章が読めたのかこれではわからない。
ネットで有名なものではなく、創作の例文を作って試してみよう。
例文(オリジナル):
Ploeppe can raed wdros eevn if the ltteers are mxied up, as lnog as the frist and lsat ltetres are in the rhgit pclae. The biarn dseno’t raed eevry lteter one by one, but the wrod as a wohle.
正しい綴りに直すと:
People can read words even if the letters are mixed up, as long as the first and last letters are in the right place. The brain doesn’t read every letter one by one, but the word as a whole.
日本語訳:
人は、文字が入れ替わっていても、最初と最後の文字が正しければ単語を読めます。脳は文字を1つずつ読むのではなく、単語全体として認識しているのです。
これならどうだろう??もう一回やってみよう。
私: この文章をそのまま日本語訳してください。
ChatGPT5:
プロエッペは、単語の最初と最後の文字が正しい位置にある限り、文字が混ざっていても単語を読むことができます。脳は文字を一つひとつ読むのではなく、単語全体として認識しているのです。
やったね!!狙い通り(?)AIにはできないことを見つけられました!!
いや待てよ、、、
「プロエッペ」って読むのはPeopleが読めなかったのではなくて日本語でプロエッペというキーワードがあるんだと勘違いしただけじゃないか、、、?
それ以外の文章はほとんど間違いないし、AIにもタイポグリセミアは当てはまる気がする。
AIはどうやって“読んで”いるのか?
実験の結果、ChatGPT5はタイポグリセミア文をほぼ正しく理解できました。 ただし、これは人間とまったく同じ“読み方”ではないようです。
人間の脳は「文字の形」や「文のリズム」から意味を補完していますが、 AIは「学習データから確率的に最もありそうな単語」を推測しています。 つまり、AIは“読んでいる”というより、“予測している”のです。
この違いを図にすると、次のようになります。
人間:視覚的 → 形や順序 → 文脈 → 意味を補完
AI :統計的 → 単語の確率 → 文全体の意味を推測
一見同じ結果(読めている)に見えても、アプローチがまったく違う。 ここに「AIが賢く見えるけれど、まだ人間とは違う」面白さがあります。逆にこのアプローチによって結果が変わってくることもあるかもしれないので、さらなる実験をしていきたいですね。
実際「Ploeppe」のように存在しない単語を目の前にすると、ちゃんと?誤訳しました。日本人であればそんな日本語は聞いたことがないし文脈としても不自然なので、「People」のスペルミスだろうと解釈できます。ですがAIからすると知らない単語は、「統計的に何かの名称だからそのまま日本語訳をするべき」と解釈したのかもしれませんね。
ポイントまとめ:
- AIは文字の順番ではなく「意味の確率」で文章を理解している
- 人間は“形”からも補完できるが、AIは統計的な予測
- 似た結果でも思考プロセスは全く違う
今回はAIにもタイポグリセミアが当てはまるのか遊んでみました。ほとんど当てはまりましたが、AIが文章を読む仕組みの違いによって、多少の違いはあるようです。
私たちがAIを使うと「人間と同じそれらしい答え」が返ってくるので「AIは人間と同じ思考をしている!」と感じる時があります。
けれど、実は文章の読み方ひとつとってもアプローチが違っていて、イレギュラーを探しているとどこかでそんな差が生まれてくることがわかりました。
AIの特性を理解してさらに正しくAIを使って、何が人間らしさなのか見つめなおすいい機会にもしたいですね。

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